ドラマ作成を取り入れたクラス活動(2)

前回のページに関連して、ドラマを作るという活動に関して、もう少し詳しく説明しようと思います。

口頭表現クラスの中にドラマ作成を取り入れたのは、2000年度春学期7A・Bクラスからでした。
7クラスとは上級レベルのクラスです。初めのうちは特に ドラマとは何か? なぜドラマを取り入れるのか?
など深く考えることもなく、「教師が設定したある場面の中で二人で会話をする時、相手によってどんな言葉を使うのか?」をペアやグループで考えて会話を作るということをやっていました。いわゆるロールプレイという方法。そのうちに、学生自身が場面を設定して会話を作るということになり、それに顔の表情や身体の動きを加えてみたらドラマと呼べるものになっていたのです。

春学期の7A・Bクラスでは、3グループで3作品、秋学期の7A・Bクラスでも3グループ3作品が完成しました。今でも上演ビデオ(VHSテープ)とスクリプトが残っています。どちらのクラスもBクラスの学期後半の6〜7回を使いました。また、ボランティアの日本人学生がグループに一人ずつ入ってくれて、いろいろ相談しながら作っていきました。

2001年度は春学期も秋学期も口頭表現4A・Bクラスの担当となりました。
4レベルとは、初級の終わりから中級の初めくらいのレベルです。この2クラスでも、Bクラスの学期後半にドラマを作らせてみました。Aクラスのほうで依頼・勧誘・許可などの表現の練習をしていたので、それを組み合わせてドラマを作るということから始めました。やはりボランティアの日本人学生に文法の間違いを直してもらいながら作っていきました。
春学期5作品。秋学期5作品。以下に、クラス最後に学生たちが書いたコメントを載せておきます。

「グループでやったからよかった。」「本当に日本語を話せる機会になりました。」
「つまらない。」「役にたたないかもしれません。」
「みんな一生懸命に準備し、出演し、とても楽しかった。」
「作る時間はとてもたのしかった。でも、ビデオで見た時にとてもはずかしかったです。」

「なんでグループを先生が作ったのか?」
「自分でグループを選んだほうがいい。」
「先生がグループを作ってみなよく知らない人と一緒になってできるだけ面白いミニドラマを作らせて、いいけいけんだったと思う。」
「グループがよければよいと思います。」
「日本語で気持ちを伝えるのはむずかしかったです。その上に3・4人で話を合わせるのもむずかしかったです。」
「ボランティアが会話を全部一人で作った。」
「ボランティアがスクリプトを自然な日本語に書き直してくれた。」
「ボランティアといい関係を作ることができた。」

いろいろな意見が出ています。もともとグループ活動が好きな学生ときらいな学生がいます。グループで何かをしても自分の能力アップに結びつかないと考えているのでしょうか?自分自身の日本語能力そのものに自信があるかどうか?もポイントのようです。もちろん、日本語能力に関係なく誰とでもうまくやっていけるタイプの学生もいます。他の人との協同作業を楽しもうという気持ちを積極的に持てるかどうかということだと思います。

グループ分けは、教師が名簿順に区切っていっただけです。同じクラスにいても親しい友だちとそうでない人がいるのは当たり前のことですが、教師としては「あまり話したことがない人だからこそこれを機会に親しくなってほしい」と思ったのです。縁あって同じ時期に日本に留学して、同じクラスになったのですから・・・。

ボランティアとの関係も同じ。教師が見ていた限りでは、何もかもボランティアがやってしまったようには思えませんでした。どうもグループ内の日本語能力に自信があり積極的な一部の学生がどんどん話を進めていって、うまく流れに乗れなかった学生が不満を持ったということでしょう。

2002年度も2003年度も、口頭表現8Eというクラスの担当になりました。
8レベルとは超上級レベル。つまり、日本語能力試験1級のさらに上。日本人と同じぐらい日本語ができる学生のクラスです。学部の学生が多くて、日本語は外国語科目として卒業単位を取るために必要な科目なのです。日本人と同じように読み書き聞き話しができる学生たちなので、口頭表現クラスは日本語のおしゃべりクラスだけで終わらないように教師も気をつけなければいけません。そこで、あらためてドラマを作るということをクラスのメインの活動することを考えました。

キーワードは、音声言語表現と身体表現の組み合わせ 言葉を話すということの意味を考える

ただ場面を設定して会話を並べていくだけではなくて、顔の表情や身体の動きについても意識的に捉えてみるということ、グループで作品を作っていくという活動が成功するために一番大切なことは、よく話し合うこと、当たり前のことではあるけれど、日本語クラスの活動で行うとなると、なかなかむずかしいところがあるようです。

2002年度のクラスの話は、前回のページで詳しく書いたので省略。

2003年度春学期は、学生4人のクラスでしたが、次々にアイディアを出し合って、『ゴキブリ事件』というコメディーを作りました。

学生たちの作成ノートより

  作成意図は、「飲食店の衛生上の問題を取りあげる。」「見る人に笑ってもらう。」

  結果については、
    「初めて体験したドラマ作成でした。5分間のミニドラマですが、演技に対しての発想などの楽     しみを味わうことができました。道具の準備も楽しかったです。一つの経験といえば、ドラマで     は役者たちがそのストーリーに全身全意取り組むのが一番重要だと思います。」
    「自分が担当した役の性格とかを充分に生かすために演じてみました。」
    「ドラマを作成するために、いろいろな道具を準備したり時間を考えたりしていました。また、自    分が演じる役の性格についてみんなの意見を受けて、とても役に立ちました。」
    「クラスの皆さんと一緒にコミュニケーションをしながら真の意味での口頭表現ができるので、    とてもいい勉強になったと思います。」

2003年度秋学期のクラスは、偶然男女4人ずつの8人という人数だったので、男女2人ずつの2グループに
分けました。

学生たちの作成ノートより

   作品1 『お見合い』

作成意図
は、劇の構成員が男女2人ずつなのを考慮に入れて、題材を何にするかを考えた。お見          合いをテーマにしたら役をあてることに無理が少なそうで、ストーリーも難なく進みそう          だったので、『お見合い』を作ることにした。お見合いで実際ありそうな会話をベース           に、少し笑いのある作品を作りたかった気持ちからコメディ要素を少し含めた。

結果については、思ったよりむずかしかった。授業時間以外では練習をしたことがなかったからか、           台詞や動作、音楽を合わせることが簡単ではなかった。台詞が長く、普段使わな            い言葉が多く入っていたため、覚えることや演じることに問題が感じられた。


   作品2 『黒猫の歩く道』

作成意図
は、童話のような劇をやって今までとは違う新鮮さをアピールしたかったです。そして、ただ         セリフを言うのではなく、大きく動作したり音楽を加えたり衣装を準備して見せるために         は、特別なストーリーが必要でした。

結果は、台本を読んでいないと伝わってこないんじゃないかと心配したが、思ったより伝わってきてよ      かったです。セリフが違ったり音楽が流れなかったりはしたが、みんな練習の時より動作も      大きくてうまかったと思います。

秋学期は、春学期以上にみんな乗ってくれました。セリフを覚えて話すだけでなく、身体の動きにも工夫していました。また、どちらのグループも音楽を入れるということに特にこだわっていました。テレビのドラマなどでBGMが効果的に使われているということを体験しているのでしょう。CDやカセットテープをたくさん持ってきて聞き比べて選んでいました。やっぱり最近の若者は音楽が非常に身近なところにあるのですね。

じつは、春学期も秋学期も、学部生と大学院生のクラスで朝9時から始まるクラスということで、出席者が減ってくるのではないかと心配していたのですが、だいじょうぶでした。学期後半のドラマ作りが始まってからは、休む学生もなく遅刻も少なく、自分がいなければグループの他のメンバーが困るということがよくわかっている学生たちでした。

これは当たり前のことなのですが、自分一人ぐらい休んでもカンケイないなんて考えている学生もけっこう多いのです。もちろん、個人活動だけのクラスならその人が単位取れないだけで特に問題はないのですが、グループ活動の場合はみんなのメイワクとなりますので、大問題です。このことは、日本語レベルでどう変わるということではなくて、その人の人間性に関わることです。やっぱり協調性って大事。

協調性って、自分の言いたいことを言わないで他のひとの意見に従っていくことではないはず。みんなで何かの作品を作っていくような場合、自分がいいと思ったことははっきり言うべきです。もちろん、他の人がみんな賛成というわけではなくて対立してしまうこともあるでしょう。でも、それはよりよい作品を作るという同じ目的に向かっていることだから、とことん意見をぶつけあったほうがいい。その中からよりよいものを選んでいけば、みんなが納得できる作品ができると思うのです。もちろん、みんな平等の立場で。言葉を話すことの意味ってこういうところにあると思います。

つまり、これが、口頭表現クラスなのです。